皆さんこんにちわ!まっきーです。
今回は、2022年4月23(土)に発生した、知床遊覧船の海難事故について取り上げます。
25日現在、遭難した26名中11名しか発見されておらず、残り15名の安否は不明なままです。一刻も早い救助が待たれますが、一体なぜこの海難事故はおきたのでしょう?
事故にまつわる情報を簡単ですが纏めてみました。
4月23日(土)当日の様子
当日の2022年4月23日(土)の天候は、以下のような状況でした。
気象台によると事故当時、周辺の海域の波の高さは3メートルで、強風と波浪の注意報が出ていた。
つまり、遊覧船を出すにはリスキーな日であったと思われます。事実、他の運航会社は運航を取りやめています。
しかし、運航会社「知床遊覧船」の観光船「KAZU 1(19トン)」は、観光客24名と乗員2名を乗せ午前10時ごろに港から出航します。
その後、異変があったのは出港からおよそ3時間後の午後1時ごろ。海上保安庁によると、知床半島の沖合から無線や電話で以下の救助要請があったとのこと。
「船首が浸水し、沈みかかっている。エンジンが使えない」
さらに午後2時ごろには「船首が30度ほど傾いている」と運航会社に伝えたのを最後に連絡が取れなくなる。
つまり、最初の救助要請からわずか1時後には船首が30度も傾くほどに船が沈み始めていた事がわかります。
「カシュニの滝」付近で消息不明となる
その後、KAZU 1とは連絡が途絶える。恐らく、その後に船が沈んだ可能性が高いと思われます。
また、船が沈んだと思われるのは、ウトロ港から約27km離れた「カシュニの滝」付近と言われています。
この「カシュニの滝」付近は「潮の流れが速いほか、暗礁があり危険な場所」と言われる場所。
この付近でエンジントラブルが発生し、コントロールが利かなくなった船体が風や波で流され、暗礁(海中にかくれていて見えない岩)に船が接触、船首付近に何等かの損傷が起きたのではないか、と見られています。
というのも、KAZU 1から連絡のあった午後1時は、本来であればウトロ港に帰港しているはずの時間なんですね。
この時点で、ウトロ港から約27km離れた「カシュニの滝」付近を航行していたという事は、エンジントラブルにより航行不能に陥った可能性を物語っているものと思われます。
観光船「KAZU 1(19トン)」とは
今回事故に遭っ観光船「KAZU 1(19トン)」ですが、いくつか問題がある事が分かっています。
40年以上も前のほうらい汽船?
KAZU 1は、40年以上前に瀬戸内海仕様として建造された元ほうらい汽船の「ひかり8号」ではないか、との情報があります。
以下は、そのひかり8号と思われる船の画像です。
一方で、こちらが今年2月に撮影されたKAZU 1の画像です。
素人目には同じ船かどうかは分かりませんが、基本的な船の構造はかなり似通っているように思えます。
仮に、上記が同じ船であった場合、40年以上前に建造された瀬戸内海仕様の船が、オホーツク海の荒波で使われていたことになります。
また、海難事故に詳しい東海大学の山田吉彦教授によると、
事故当時の周辺海域では波の高さが3mと波浪注意報が出ていた。19tの観光船が波の高さ3mで出港するのは通常なら考えられない。船酔いがすごくて、観光どころではない。
とのこと。もちろん真相は不明ですが、40年前に建造された瀬戸内海仕様の船を、3mの波がある日に出航させた、という事になります。
KAZU 1の船首に亀裂?
もうひとつ気になる情報があります。それは「KAZU1の船首に亀裂がある」という情報。
先ほどご紹介したKAZU1の画像の中に、亀裂がはいっている箇所が見受けられるのです。画像を少し引き延ばすと、KAZUⅠというロゴの右横付近に亀裂がある事が分かります。
この亀裂が、今回の事故を引き起こしたか否かは不明ですが、このまま放置されて使われていたとなると、今回のトラブルに何らかの影響を及ぼした可能性は高いと思われます。
なお、本画像をツイートされた「しろまる最北日記」さんは以前、知床の別の観光船運行会社でアルバイトしていた方の模様。
行方不明になった船について、以下のようにツイートされていました。
知床ウトロの観光船は、岸に沿って岬を北上するので『沖』と言ってもそこまで陸地から離れていないはずです。行方不明ということは最悪の事態が考えられます。
小型船は断崖の間近まで寄ることができるのが最大の魅力なので、船長さんはギリギリを攻めます。正直、座礁事故はけっこうあります。
実は、私自身も今から10年ほど前に、知床遊覧船に乗った事があります。私が乗った船は、KAZU1よりも小型で、10数名で満席になる程度の大きさの船でした。
その時も、かなり断崖間近まで船を近づけていらっしゃいました。
その時は何も感じませんでしたが、同様の事故が起きる可能性があったかと思うと、少しだけゾッとします。
なぜKAZU1は出航したのか
この事件について、一番気になるのは「なぜKAZU1は出航したのか?」という疑問です。この件については、今後ある程度分かってくるのではないかと思います。
また、先ほどご紹介した「しろまる最北日記」さんはツイートの中で、以下の様に発言されています。
「あまり言いたくないけれど、事故を起こしてしまった会社の船は他社よりも屋根のあるキャビン内の席が多いので、多少天気が悪くても、他の会社を差し置いて出港しがちなところはありました。」
この事から、これまでも今回のような荒天でも出航を決断することが常態化していた可能性があるのではないか、と思われます。
また、同船は昨年だけで2回も事故を起こしており、書類送検もされているとの情報がありました。
要するに、今回の事故が起きる兆候は昨年既に起きていた事になります。せっかく危険を回避するチャンスであったのに、その教訓が活かされなかったのが悔やまれます。
まとめ
今回の事故を受け、疑問に思った点を最後に簡単にまとめます。
・船の船首に亀裂が入っていたことから、KAZU1が航行するうえの安全面に問題はなかったのか。
・KAZU1は昨年だけで2回ほど事故を起こしており、対策はされていなかったのか。
・当日の天候は悪天候。他の運航会社が運航を取りやめる中、なぜKAZU1は出航を決断したのか。
・岸に沿って北上するため陸地から離れない船だが、救命ボートやその他対策は必要なかったのか。
特に怖いと思ったのが、用意していたのはライフジャケット(救命胴衣)のみ、という点です。
今回のように、何等かのトラブルに見舞われ、海水の温度が低い状態で海に投げ出されたら、溺れなくても数十分で低体温症に陥る可能性がかなり高いと思われます。
低体温症とは,深部体温が35℃未満となることである。 症状は,シバリングおよび嗜眠から錯乱,昏睡および死亡へと進行する。 軽度の低体温症には,暖かな環境と断熱性の毛布が必要である(受動的復温)。
引用元:MSDマニュアル より
しかも、知床付近は救助が駆けつけるまで数時間を要する場所だとか。つまり今回のような事故が発生してしまうと、低体温症により命を落とす危険がかなり高い、という非常にリスキーな状況であった事が分かります。
今後、何らかの対策を立てる必要があるのではないでしょうか?
いずれにしても、同じような事故が起きない事を祈るばかりです。